出ろ!!

 片言の日本語を習った先生が、日本に来たばかりの頃、ちょっぴり恥ずかしい勘違いをしたと言う。
 駅やデパートに、客を客とも思わない、ずいぶんぞんざいな言葉がいっぱい書いてあったというのだ。
 それが「出ろ」である。
 先生がどんな勘違いをしたか、御判りだろうか?

 答えは「出口(でぐち)」の「口」と言う漢字を、カタカナの「ロ」と勘違いしたからである。
 なまじ外国語をかじると、時にはへんてこりんな誤解をしてしまうことが有るということだ。

 韓国語で「すいません」という意味の言葉が有る。
 ちょっとしたミスをした時に使う言葉であるのだが、この言葉を覚えた日本人は「出ろ!」と同じような勘違いをする時が有る。
 例えば韓国で道を尋ねるとき、日本人の癖で「すいません」と言う意味を直訳して声を掛けると、奇異の目で見られる。
 なぜなら「すいません」というのは何か悪いことをした時だけに使う言葉であって、何も悪いことをされたわけでもないのに、突然謝られるようなものだからだ。

 韓国ではちょっとくらい肩がぶつかっても、日本人のようにしょっちゅう「すいません」という謝罪はしないそうだ。
 だから日本人が韓国の町を歩いているうちに韓国人とぶつかったとしても、謝らなくても大丈夫だし、逆に韓国人の方がぶつかって来て、謝らなかったからといって「あいつぶつかってきたのに、謝りもしない」と考えてはいけないそうだ。
 ただし時と場合というものが有る。
 酒を飲んでいるときや、やくざまがいの人間だったら、素直に謝ったほうが良いだろう。

 日本に来て半年ほどたった韓国人留学生が、友人と一緒に居酒屋で酒を飲んでいた。
 だいぶ酒が回ってきて、トイレに行こうとしたら日本人とぶつかってしまったそうだ。
 狭い通路だったので仕方ないと思うが、お互い酒が入っているので突然腹が立って一触即発の事態になってしまった。
 韓国人留学生は「おい、てめぇ!こっちに出てこい!」と言ったはずだった。
 ちなみに「出てこい!」とは韓国語の直訳で「出ろ」。
 このように書く。

나와! na-wa!

 ところがなまじ片言の日本語を習ってしまっていたため「こっちに、いらっしゃい!(桂三枝風)」と敬語で言ってしまったそうだ。
 おかげで険悪なムードが一瞬のうちに爆笑の渦に変わってしまったという。

 もし韓国に行って、ひょんなことから韓国人と喧嘩になりそうなときには、ドスを利かせた敬語を使うと、一挙に事態が変わるかも知れない。

 なお、さらに相手を怒らせてしまっても、当方では責任は持てませんですm(_ _)m

<01/09/05>