虎の威を借る狐

 学校から帰り、メールをチェックすると見知らぬ人からメールが入っていた。
 それは前日、某メーリングリストに投稿した私の文を見て、気に入らないところがあるという。
 私は、メールの頭に「アンニョンハセヨ(こんにちは)」、最後の挨拶に「アンニョンイケシプシオ(さようなら)」と書いているのだが、韓国語の挨拶を日本人にするのは凄く間抜けなことだと言うのだ。

 そして「みんな貴方のことを馬鹿の一つ覚えだと言っている」と締めくくっていた。

 私は自他共に認める韓国語かぶれになりたくて、韓国語の挨拶を書いているのだ。
 しかし、最近その某パソコン関係のメーリングリストは、パソコンに関する技術的な質疑応答以外の個人的な考え方の相違に関してヒステリックに反応する読者が多くなってきたように感じられた。

 「いくら何でもそれは貴方の勘違いだ」とメールを送るのだが、まだまだ人を納得させるだけの文章が書けないため、更に反感を買ってしまうということさえあった。
 そんなメーリングリストが嫌になり、しばらく投稿は控えることにしていたのだ。
 いや、現実には韓国語の勉強が面白くて、パソコンの情報交換、特に私が人に情報を提供するという知識が少なくなってしまったので、発言ができないというのが正解かも知れない。
 そして1ヶ月ぶりに投稿したメールに対する反感を見て、ため息を付くしかなかった。

 私は彼一人から韓国語の挨拶が嫌いだからと言って「ハイソウデスカ」とやめるような人間ではない。
 そして一つだけ気に入らないことが有った。

みんな貴方のことをそう思っている

 と、言うところである。
 彼が私を、そして韓国語の挨拶を嫌いなことは、文面をみれば直ぐ判ることだが、なぜ虎の威を借る狐のように、「皆、そう思っている」と言うのだろうか?
 「私の意見は絶対正しいものであるから、皆も共通の認識をしているはずだ」と、自分の言い分を弁護したい気持ちは判らないでもないが、それは一個人の錯覚であるかもしれないからだ。
 少なくとも私はこのような言い回しは絶対にしない。「個人的には好きでありません。」「私は嫌いです」と自分の心情をストレートに述べる方である。

 私のそういう態度が「個人的に気に入らない」という人は多いだろう。
 そういう人がいることも良く解っているが、パソコンのことに関して困っている人に手を差し伸べるべく、無い知恵を振り絞って投稿したのに、その技術的内容とは全く違う「一部分」を指摘された事に、ちょっと幻滅してしまった。

 もちろん「手を差し伸べたあげたのに」と言う自己満足的な感情は持っていない。
 私に苦情のメールを送ってきた彼には、これからも私が答えられることがあったら「アンニョンハセヨ!?」と何事もなかったかのように登場すると、返事を書いた。
 解答は全く無い。

<01/08/11>

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