おたく

 以前、こんな作文を作った。

私はつまらないことに拘る、オタクです。

 まず、オタクという部分を韓国人に説明するのが難しい。
 オタクという言葉自体、平成の時代になって定着した新しい言葉だし、現在に至るまで、日本人が持っているオタクのイメージは二転三転して来たと思う。

 そもそも「オタク」という言葉の語源は、今から20年近く前、あるルポライターが「コミックマーケット」という、漫画やアニメーションが好きな人達が集まるお祭りを取材に行ったことに始まる。
 そのルポライターは、いい年して漫画やアニメなんかにのめり込んでいる人間に、一種の偏見を抱いていた。
 そしてコミックマーケットに集まる人達は、お互いのことを「おたくは○×見た?」とか、「オタクは△■の新作買った?」だとか言っているのが印象的だったそうだ。
 それでそのルポライターは「コミックマーケット」に集まる一種異様な人間達を「オタク」と命名したと言う。

 韓国語にも二人称の呼称で、相手のことを「オタク」と言う表現があるにはある。

daeg-eun:お宅は〜

 しかし、これはあくまでも辞書に載っている表現であるし、いままでこのように相手のことを呼称するのを聞いたことがない。
 おそらく日本語同様に、あまり使われない二人称呼称なのだと思う。

 さて、長年日本に住んでいるネイティブの目から見て、オタクをあえて翻訳するとしたら「〜狂」というような表現になるそうだ。
 「パソコンオタク」なら

PC PC-gwang:パソコン狂、PC狂

「漫画オタク」なら

man-hwa-gwang:漫画狂

となる。

 次に「拘る」という表現・・・

gu-ae-ha-da:拘る

 さて、文章を構成する部品=単語がそろったところで、上の文を韓国語に翻訳することにしようと思ったのだが、「オタク」の部分はどうも機械的に「〜狂」に直すとおかしいと思い、次のような文になった。

    
私はつまらないことに拘る人間です。

 すると、先生は私の作った作文をこのように直して下さった。

    
私は多くの求愛を受ける人間だ。

gu-ae:求愛

 あれ?全然違う意味の文章になっているではないか!
 先生は「拘る」という意味の漢字語「拘礙」を、同音異義語である「求愛」に変えてしまったのだ。

 先生によると、日本人はこの「拘る」という表現を誤解しているというのだ。
 日本語でも本来「拘る」という言葉は、あまり良い意味ではなかった。
 例文を出すとしたら「そんなくだらないことに拘るな!」とか、拘ると言う言葉の後には否定文が来なければならない。
 だが、いつの頃からか「拘りのお店」だとか、一種のステイタスを持った肯定の表現として使われるようになってきた。
 だが、韓国語では「拘る」の後ろには否定文が来なければならないと言うことらしい。

 そういうこともあって、先生は色々な趣味を持つ私の事を「多くのことから求愛を受ける」と表現を直して下さったと言う訳だ。

 私はパソコンも好きだし、韓国語の勉強も好きだし、アニメも漫画も好きなので、他人から見たらオタクであることは間違いない。
 だが、自分が「多くの求愛を受ける」というのは、ちょっぴりむずがゆい気がする(^^;

 韓国語とは全く関係のない話題だが、雑談の中で先生が「宣教師さんはオタッキーなんですね」とおっしゃった。
 その時「丁寧語の”お”はいりませんよ〜」と言ったのだが、周りから「誰がタッキーじゃ!(ジャニーズのタッキー&翼のタッキー)」と更にひんしゅくの目で見られたのは言うまでもない。

<04/05/27>

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