ポッサム

 相変わらずの韓国ブーム。
 現在、NHK-BS放送では「大長今(チャングムの誓い)」という、朝鮮王朝時代の宮廷料理長の一生を画いた大河ドラマを放送中だ。(我が家はBS放送が見られないので、このドラマは見ていない)

 私も平成15年の韓国旅行で、刺身や三枚肉など、色々な食材をサンチュや胡麻の葉、キムチなどにくるんで食べる「宮廷料理」の一種を味わったことがある。
 この料理を「ポッサム」というらしいが、読者の中には「ポッサムキムチ」などの名前で聞いたことがあると思う。

 この「ポッサム」と言う単語はハングルで書くと

bo-ssam:ポッサム

なのだが、日本向けの宣伝では「キムチの王様」とか、発音が「幸せを包む」という意味合いから「幸せを呼ぶ食べ物」と紹介されているようである。

 だが、この「ポッサム」という単語は、元々二つの言葉の合成語であると教えられ、目からうろこが落ちが気分になった。

 まず、一文字目の「bo」は品物を包むための布、韓国版の風呂敷とも言える

bo-ja-gi:ポジャギ

の頭文字である。
 辞書を見ると、この「 bo」は「褓」という漢字語で、「風呂敷」という意味があるようだ。

 そして、二文字目の「サム」とは、包むという動詞

ssa-da:包む

の名詞形である。
 つまり「ボッサム」とは「布で包んだもの」という意味であることが分かる。

 この話だけでも「10ヘー」位出したくなるが、「ポッサム」にまつわる、とてつもない話しを聞いてしまった。

 昔々、電気など無かった時代の話し。
 とても美しい女性がいたそうだ。
 その女性はすでに結婚していたのだが、ある悪い男がどうしてもその女性を欲しくなったという。
 その男は真夜中、女性の家に忍び込み、寝ている布団ごと縛り上げて誘拐してしまった。
 当然のことながら、嫁がいなくなった家は大変な騒ぎになる。
 嫁に入った女性というものは、子供を産んでおばあちゃんになるまで、その家を出ることは許されなかった時代。
 ところが自分の妻が誘拐されたなんて、とても恥ずかしくて言える話しではない。
 そこで、その妻は「病に冒されて死んでしまった」と言うしかなかったそうだ。
 略奪婚?と言えば聞こえが良いが、誘拐された女性は第二の人生を歩み始めるしか無いなんて、女性の権利が無いに等しかった、古き朝鮮時代ならでわの話しである。

 この話を聞いた後、辞書で「ポッサム」を調べたところ、他にも面白い話しが書いてあった。
 一つ目は、上の話しの別バージョン。

 良家の娘が「二度結婚する運勢(八字)である」と占われると、ある厄除けを行ったと言う。
 女性というものは、一生一人の男性に尽くさなければならないと言う風習があったため、そんなこと有ってはならない話しである。
 そこで、結婚相手とは関係のない男(おそらく奴隷階級)を、す巻きにして(布で包んで)ら致し、一時的に娘と生活させた後、殺してしまったと言う・・・

 このような昔話があったからだろうか、ポッサムという言葉に「ふいにら致される」という意味が有るようだ。

 ところで「ポッサム」という言葉は、キムチなどをまいて食べるという、料理の名前から出たのか「す巻きにしてら致する」という恐ろしい行為と、どちらが先に出来たのだろうか?
 興味津々である。
 どちらにしても、これから「ポッサム」という料理を食べる時は、かならずこの話を思い出してしまいそうだ。

<04/11/11>

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