今回は、かなりお勉強的なお話である。
水割り大学に行って、お馬鹿な表現を学ぶことも好きだが、時には「そんなこと考えたって、韓国語を上手く話せるようにならないでしょ!」という事も考えたりするのだ。
さて、虹を韓国語で言うとなんと言うか?
答えは「ムジゲ」である。
mu-ji-gae:虹[固有語]
それでは、韓国で虹は何色に見えるか?
答えは日本と同じ「七色」だそうだ。
韓国には、虹の色を覚える歌のようなものが有るらしい。
各色の頭文字(当然ハングル)をとって、以下のように覚えるそうだ。
bbal-ju-no-cho pa-nam-bo
さて、韓国語を勉強した事の無い人には申し訳ないが、どの文字が何色であるか、ちょっと考えてもらいたい。
さて、初歩の単語であっても、たまにしか使わないと忘れがちである。
とりあえず、色の表現に関する復習を兼ねて、対比表をご覧になってもらいたい。
日本語 | 韓国語 | 発音 | 原型 | 発音 |
赤 | bba-ran-saeg | bbal-gad-ta | ||
橙 | ju-hwang-saeg | 朱黄[漢字語] | ||
黄 | no-ran-saeg | no-rad-ta | ||
緑 | cho-rog-saeg | 草緑[漢字語] | ||
青 | pa-ran-saeg | pa-rad-ta | ||
藍 | nam-saeg | 藍[漢字語] | ||
紫 | bo-ra-saeg | bo-ra |
色に関する表現は、上のほかにも数限りなく有ると思いますが、話しがややこしくなるので、今回は「虹の色」に関するものだけに限定させていただきますm(_ _)m
虹の色をそれぞれ見てゆくと、固有語と漢字語が混じっている事が分かると思う。
固有語とは、中国の漢字文化が入る前から朝鮮民族の間で使われて来た言葉であるし、逆に言うと漢字語の方が、後から付け加えられた言葉であるとも言える。
私が何を言わんとしているか、ご理解いただけただろうか?
今回のテーマは「固有語と漢字語から歴史的背景を考える」である。
心の中の気持ちを、他人に伝える為には、その言葉を聞いて万人がほぼ同じものを想像する「言葉=単語」が必要だ。
朝鮮に中国の文化=漢字語が入ってくる前は、中間色に関する単語が無かったと仮定すると、かつて朝鮮民族は虹を「4色」に見ていたのかもしれない。
その後、漢字語が入って来たから、現在のように7色であると固定化されたのだろう。
いや、まてよ…
赤・黄・青の原型と、紫のハングル構造がちょと違うぞ…
これはどういうことだ?
辞書を調べてみると、赤・青・黄(それと白と黒)は、子音の入れ替えなどで、数々の表現が存在するのに、紫だけは変化系が無いではないか。
とりあえず仮定の話しだが、赤・青・黄・白・黒という5色に関しては、遥か昔から有った固有語であり、その中間色である「紫」は漢字語よりは古い部類に入る「固有語」であるのかもしれない。
となれば、太古の朝鮮民族は虹を3色と捉えていたのかもしれない。
いやいや…
紫以外にも、今では使われなくなった中間色に関する単語が有ったのかもしれない(-"-)
ん〜ん。こういうところにロマンを感じてしまう。
さらに脱線は続く。
日本語の色に関する表現で引っかかる事が有った。
それは「黄色」である。
日本語の「赤・青・白・黒」という4色に限っては
赤い-唐辛子
青い-海
白い-雪
黒い-雲
のように、「色の名称+い」という形になるのに、黄色に限っては
黄色い-チューリップ
と、「色」が割り込んでくるではないか。
もっとも、基本5色以外の色で名詞を修飾しようと思ったら
紫色の-スカート
と、なってしまい、明らかに基本5色と文法構造が違う事が分かる。
このことから考えると、黄色は、韓国語の「紫」同様、かなり昔からあることはあるが、「赤・青・白・黒」よりは新しい色表現で有ると言える。
※ 脱線ついでの余談だが、黄色という言葉は平安時代から使われ、橙色(オレンジ)に至っては、明治時代に入ってから使われ始めたという話しを聞いた事が有る。
緑色を青と言ってしまうし、そもそも「青」とは「赤・青・白・黒」以外の色と言う認識が残っているらしく、昔見たテレビ番組で黄色も青のうちとも取れる、色認識を持っているおばあさんを見た事が有る。
つまり、日本人が虹を7色と認識したのはここ100年以内の話しだと言えるのかもしれない。
それより日本語の色表現には、最小公約数的な漢字語より「鴇色(ときいろ)」とか「鼠色(ねずみいろ)」だとか、誰でも簡単に想像できる動植物の名前を使って表現する、美しい色文化があった。
それをどこかの頭の固い学者もどきが「子供たちが間違った固定観念を持ってしまう」などといい始め、「美しい日本語」の中から固有の文化を排除する愚行を行なってしまった。
まぁ、「鴇色」と言ったって、日本の「鴇」は絶滅してしまったので、私自身、体感的に鴇色というものは分からないが、動物を絶滅させるのも、言葉を絶滅させるのも同じ人間だと思うと感慨深いものが有る…
韓国語・日本以外の国では、虹は何色と見られているか?
調べてみたところ、民族によっては2色というところもあるそうだ。
まぁ、虹を7色と考えてしまうのも、民族的、文化的背景が染み付いているからこそ言える話しで、虹は赤から青まで光のグラデーションがつながっている。
虹を2色と考えてしまう民族より、日本・韓国の方が色に関する表現が豊かであるので優れた民族だと言いたいのではない。
話しは変わって、韓国語で朝昼晩を表す単語ををなんと言うか思い出してもらいたい。
sae-byeog:明け方[固有語]
a-chim:朝[固有語]
nad:昼[固有語]
jeo-nyeog:夕方[固有語]
bam:夜、晩[固有語]
それでは朝ご飯、昼ご飯、夕ご飯は…
もうお気づきかと思うが、朝と夕方を表す単語はそのまま「朝ご飯」「夕ご飯」という意味で使われる。(※食事という単語をつけて表現する事もある)
() a-chim(sig-sa):朝[固有語](+食事[漢字語])
() jeo-nyeog(sig-sa):夕ご飯[固有語](+食事[漢字語])
だが、昼ご飯を表す単語は別に存在する。
() cheom-sim(sig-sa):点心=昼ご飯[漢字語]
そう、昼ご飯だけは漢字語=完全に中国から来た言葉だ。
電子辞書を見ると「点心」と言う言葉には「中華料理で食事代わりにとる食べ物、空腹しのぎに食べる軽い食事」であると書いてある。
なぜ昼ご飯だけ「点心」という漢字語を使うのだろうか?
以前、言語学者の先生から「昼ご飯」に関して、こんな話しを聞いた事が有る。
韓国語に昼ご飯と言う固有語が無いのは、昔、朝夕の二食しか食べる習慣がなかったからなのでしょう。
王様はさておき、農民は三食食べられる程、豊かではなかったのかも知れませんが…
成る程ね!
語学は、その国の歴史的背景や、文化の事を勉強すると、より深く理解できると思う。
ん〜ん。特別落ちが無いが、時には漢字語と固有語がなぜ存在するかなんて古くて新しい疑問を私なりに考えてみた、役に立たないレポートでした(^^;
<05/03/27>
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