97 餅になる

 最近見た韓国映画の中で一番面白かったものは何かと聞かれたら、迷わず「猟奇的な彼女」だと答えたい。

  yeob-ggi-jjeogin geu-nyeo:猟奇的な彼女

 「シュリ」や「JSA」を超えた!と言うような、ド派手なキャッチコピーは付いていないものの、前回「95 親旧」で紹介した「親旧(チング)」とは別の意味で流行った映画だ。

 この「猟奇的な」と言う言葉を聞くと、この映画が「カル(原題 Tell me something)」の様な「猟奇的連続殺人事件映画」ではないかと想像してしまうが、そうではない。
 もともと「猟奇的」という言葉は日本と同様に「残虐、残酷」とかの類義語であったが、この作品では「物凄く風変わりな」とか「とんでもない」という意味として使われている。
 簡単にストーリーを紹介すると、物凄く可愛いけど、とんでもない行動をする「彼女」に振り回される「さえない男」とのラヴストーリー。
 もともとこのお話は、Internetに公開されていた小説だったそうだ。
 現在は書籍の発行、映画化にともない全てのお話は掲載されていないが、興味の有る方はみて欲しい。

猟奇的な彼女
http://www.kyunwoo.net/left/serial/serial1.htm
映画「猟奇的な彼女」公式HomePage
http://www.yupgigirl.com/

 私はこの映画が物凄く気に入ってしまい、どうしてもDVDで手に入れたかった。
 おかげでとんだ苦労をすることになった。(おまけコラム「韓国のDVDソフトが見たい」参照)
 日本でも公開して欲しいなぁ〜。

 さて、この映画の中に面白いフレーズが出てくる。
 主人公の男が電車の中で酒に酔ってぶっ倒れてしまった彼女を目撃する。
 ほっぽっておくことも出来ず、しかたなく主人公が背負ってラブホテル(単なる旅館かも知れない)に連れ込むというシーン。
 チェックインの時、管理人のオジサンがこんなことを言ったのだ。

  ddeogi dwaen-ne!:餅になっちまったんだな!

ddeog:餅

 状況から考えれば御判りだと思うが、酒に酔ってグデングデンの状態を「餅になった」と表現しているようだ。
 柔らかい餅がでれ〜んとなってしまうところから来ているのだと思う。
 日本語で言うとどんな表現が適切なのだろう・・・(-"-)
 ちょっと思いつかないが、この表現は実に韓国語っぽい。

 韓国文化の上で「餅」を語り始めるとかなりの大事になってしまう。
 そこで韓国人と餠に関する代表的な物を書いてみたいと思う。

■ 絵に描いた餅

  keu-rime ddeog:絵に描いた餅

 日本語でも全く同じ諺があるが、日本人は「実現できない計画」という意味として使っているような気がする。
 韓国語では「高嶺の花」と翻訳したほうがしっくりするときがある。
 確かによく考えてみると、「実現できそうもない計画」と「高嶺の花」は似たような物だが、日本人はあえて区別して使っているように思える。

■ 隣の餅は大きく見える

 他人のものはよく見えるという例え。
 日本で言うところの「隣の芝生は青く見える」というところだ。

■ 寝ながら餅を食う

 なんの苦労もせず出来るということ。
 日本語で言うところの「朝飯前」ということ。

■ どういった餅なんだ!

 前後の関係を見ないで直訳すると、いったいどんな意味で使われるか判らない表現がある。

   i-ge wen ddogi-nya!:これ どういった餅なんだ!

 予想外の幸運が舞い込んできた時、韓国人はこのような独り言を言うそうだ。
 諺で言えば「棚から牡丹餅(ぼたもち)」という感じであろう。

■ 餅をつける

 韓国では大学受験などをする時、その学校の校門や壁に餅、飴、ガムなどべたべたしたものをくっつけるという、とても変わった風習が有るそうだ。
 ちなみに試験に合格する、学校に受かるというのを「試験に付いた」「学校にくっついた」と表現する。

  si-home bud-dda:試験にくっつく→試験に受かる、合格する

 この表現が先にあって、こんな変わったことをするのか、はたまた風変わりな風習が先にあって、こういう慣用句が出来たのかまでは聞いたことが無い。
 とにかく韓国人にとって餅は幸運の象徴、おめでたいときの定番メニューの様な一面が有るので、餅イコール幸運を付けるという意味からこんなことをするのかも知れない。

 試験を受けるほうは「願いを込めて」餅をつけるのだが、問題は餅を付けられる学校側・・・
 昔から伝わる風習で有るがゆえ、絶対やめてくれとは言いにくいらしく、試験が終わった後、専門の業者がガム、飴、餅を片付けるそうだ。
 ちなみにどの位の大きさの餅をつけるかと聞いたところ、驚いたことに手のひらより大きいサイズの物を付ける人もいるそうだ。
 「餅のついた校門」の写真をInternetで検索したのだが、残念なことにそういう光景の写真を発見できなかった。
 受験生がガムや餅を付けるのなら話は判るが、親がその学校に行って、子供のために餅をつけるということも日常的に行われているということ。
 ん〜ん。(-。-)y-゜゜゜

 韓国の御餅に関するお話でした。

<02/03/17>

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