■ ヤンボグロ カライプコ(背広に着替えて)
午前8時、今日も蒸し暑いホテルの一室で目を覚ました。
かれこれ50時間以上クーラーをつけているのに相変わらずこの部屋は涼しくない・・・
今日は今回の旅で最大のイベントである板門店ツアーに参加する日だ。
先輩の娘さんは行くことが出来ないため、奥さんと一緒に「アグリ先生」のところに遊びに行くことになっている。
奥さんはハングルも読めないし、挨拶程度の韓国語も出来ない。
はたして無事に先生のところに到着できるのだろうかと思ったのだが、目的の駅は漢字で駅名も書いてあるだろうし、乗り換えさえ間違えなければ何とかなるだろう。
午前9時30分には迎えのバスが来ることになっていた。
二日続けてホテルのモーニングセットというのは嫌なので、コンビニでおにぎりでも買って食べようという事になったのだが、朝からコンビニの弁当を食べようという習慣が韓国には無いのだろう。
オニギリが一個だけ、菓子パンが数個しか残っていない。
仕方がないのでチョコレートケーキとクッキーのようなものを買い、牛乳で流し込んで朝食は終了。
私と先輩は「背広に着替えて」送迎バスを待った。
この板門店見学ツアーには数々のルールが存在する。
何しろこれから見学に行く場所は「南大門」でも「免税店」でもない、現実にいつ戦争が再開されてもおかしくない場所なのだから。
お金を払って見学に行くと言っても、我々の立場は「観光客」ではなく、国連が招待した「訪問客」と言うものらしい。
公式の場所に行くのだから背広にネクタイが当たり前。
だからこの時のためだけに背広を用意してきたのだ。

背広にネクタイが基本でしょ!
午前9時50分、送迎バスに乗った先輩と私は集合場所である新羅ホテルに到着。
ここから大型バスに乗り換え板門店へ向かう訳だが、指定されたバスの席を間違えないようにと言われた。
ん?何でだろう・・・と思っていたら、板門店で国連軍のバスに再度乗り換えることになるのだが、あらかじめ決められた場所に座らなければならないそうだ。
その席順は、我々が板門店見学を希望したときから国連軍によって決められ、検問所で迅速にパスポートのチェックを行なうためでも有るという。
そのため混乱を起こさないように、送迎バスの席順もあらかじめ指定されているということだった。
さっそく「板門店のルール」と言うわけだ。
予定時間になったので、皆バスに乗り込み出発!
と、思っていたらなかなかホテルの駐車場から出てゆかない。
バスのアナウンスマイクのエコーが切れないらしく、代わりのマイクを調達するのに若干時間がかかっていたようだ。
バスの入り口に、結構大きな字で注意書きが書かれていた。
エコーマイクを使ってはいけないというのも、板門店のルールらしい。

「当社は政府の方針ならびに、顧客の安全のためカラオケ機器を使用しておりません。」

厳しいガイドさん
バスが出発して直ぐ、マイクを持った添乗員さんが話しだした。
昨日、遅くまでお酒を飲んだ方、観光で疲れて居る方、眠いでしょうが私の話を聞いて下さい。
これはあなた方の安全の為、絶対に守っていただかなければならないことだからです。
それから1時間近く、彼女は「板門店の歴史」「板門店のルール」について話し続けたのだった。
■ 板門店のルール
バスには私達を含めて、18名の日本人が乗っていたのだが背広を着ている人は我々だけ。
皆ポロシャツだとか、結構ラフな格好をしていた。
そんな服装で良いのか!
添乗員さんの聞いた話では、昔はもっと服装に厳しかったらしく、男は背広ネクタイ、女もそれに準ずる服装でなければならなかったそうだが、段々と緩和されてきたそうだ。
だが、ラフな服装で良いと言っても、まだまだ「絶対的にダメな服装」と言うものがある。
まず男も女も襟のついた服を着ていなければならない。
ジーパン、ジージャン、肌の露出する半ズボン、ミニスカート厳禁。(ジーパンは自由の国アメリカの象徴だからだそうです)
いつ銃撃戦が始まり、走り出すか分からないので、走れないサンダルなどは厳禁。
などなど・・・
この程度のことは、板門店見学を思い立ったときから予習しておかなければならないことだろう。
中には条件に合わない服を着てくる人もいるらしいが、そんな時には旅行社が服を貸してくれるらしい。
ところが「高いお金を払ったのに、そんなこと聞いていない」と、自分の嗜好を曲げてまでそんなところに行きたくないと言い出す人もいるとか。
そう言えば、ガイドさんらしい女性が長ズボンを持ち、半ズボンの男性を「説得」していたのを、新羅ホテルのロビーで見た。
添乗員さんは「そんな人にこそ板門店を見てもらいたいのに・・・」とポツリと言った。
また、日本のお馬鹿な女子高校生は、あらかじめ先生から服装の注意を聞いているにも関わらず、超ミニスカートでやってくる。
先生の言うことを聞かないのだから、添乗員が「説得」するのも大変だとか・・・
他にも「指示された場所以外で写真を撮ってはいけない」だとか数々のルールを説明されたのだが、添乗員さんの一言が印象的だった。
これから行く板門店について、私がいくら話しても意味がありません。
板門店に行って何を見るかは皆さん方がご自分で決めることです。
板門店を肌で感じて下さい。
これから行く場所は単なる観光地ではないのだと、身が引き締まる思いだった。
<02/08/19>